2025年建築基準法改正でマンションオーナーが確認すべき点
20戸規模マンションの大規模修繕費用は、スケールメリットが働きにくく足場代や諸経費など1戸あたりの負担が大きくなりがちです。修繕積立金不足や資金計画にお悩みの管理組合様やオーナー様へ向け、実際の施工事例を基にした正確な費用相場や内訳の違いから、予算内で賢く収めるための具体的なポイントまでプロの視点で徹底解説します。
2025年建築基準法改正の影響とは?|マンション管理組合・法人オーナーが取るべき対応

2025年4月1日に施行された建築基準法・建築物省エネ法の改正は、マンション管理組合や法人オーナーにとって「コスト増のリスク」であると同時に「資産価値を高めるチャンス」でもあります。
今回の改正では、原則すべての新築住宅・非住宅に対する省エネ基準適合の義務化や、木造建築物を中心とした建築確認制度の見直しが行われました。ただし、既存マンションの通常の修繕工事に、新しい省エネ基準が一律に適用されるわけではありません。新築、増築、改築、用途変更などを計画する場合には、工事内容ごとに法令上の手続きや適用基準を確認する必要があります。
基準に適合した建物は中古市場での評価が向上し、補助金や優遇制度を活用することで費用負担も抑えられます。
つまり、この改正を前向きに捉え、早めに診断・修繕計画を準備することが、競争力を維持し資産を守る最適解となります。本稿では、改正のポイントと管理組合・法人オーナーが取るべき実務対応を整理します。
なお、法令の適用可否は建物の構造、規模、所在地、工事内容によって異なります。具体的な工事を検討する際は、建築士、所管行政庁または指定確認検査機関に確認してください。
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代表取締役
【監修者】長谷川 昭人
専門領域・保有資格
・一級塗装技能士
・雨漏り鑑定士
経歴・実績
・1998年 高槻市にて「長谷川建装」として創業。塗装職人親方として独立。
・2013年 拠点を豊中市二葉町へ移転。住宅リフォーム事業部を新設し、元請事業を本格開始。
・2019年 拠点を豊中市服部本町へ移転。「住まいるヒーローズ」を商標登録。
加盟団体
・大阪府塗装共同組合(第4支部長)
・PQA塗装品質機構(副会長)
・塗魂ペインターズ
2025年建築基準法改正の概要
2025年の建築基準法改正は、新築だけでなく既存建物の増築、改築、用途変更などを行う場合にも確認が必要となる重要な改正です。
主な改正内容は、原則すべての新築住宅・非住宅への省エネ基準適合義務化、4号特例の見直し、構造規制・防火規制の合理化、既存建築物の活用促進に向けた規制の見直しです。
マンション管理組合や法人オーナーにとっては、今後の建て替え、増改築、用途変更や資産評価に関係する可能性があります。ここでは、改正の主要ポイントを整理します。
1.省エネ基準の適合義務化
省エネ基準の適合義務は、これまで主に一定規模以上の非住宅建築物を対象としていました。
2025年4月1日以降に着工する場合、原則としてすべての新築住宅・非住宅について省エネ基準への適合が義務付けられました。増改築の場合は、原則として増改築を行う部分が適合義務の対象となります。
新築マンションや賃貸住宅を計画するオーナーは、設計段階から外皮性能や一次エネルギー消費量を確認し、建築確認手続きの中で省エネ基準への適合性を確認する必要があります。
具体的には、外壁や窓の断熱性能、空調・照明設備の効率化など、「断熱改修+高効率設備の導入」が建物の省エネ性能を向上させる主な方法となります。
既存マンションの外壁塗装、防水工事、設備交換などの通常の修繕工事については、今回の改正によって一律に省エネ基準への適合が義務付けられるわけではありません。ただし、増築や改築を伴う場合は、省エネ基準や建築確認の対象となる可能性があるため注意が必要です。
また、省エネ改修は国や自治体の補助金対象となる場合があります。早期に診断・設計を行えば、利用できる制度を確認しながら改修計画を検討できます。
基準への対応は単なる義務ではなく、光熱費削減や資産価値の維持につながる投資として捉えることが重要です。
2.4号特例の見直し
これまで一部の小規模木造建築物で構造関係規定などの審査を省略できた「4号特例」が見直されました。
改正後は、木造2階建てや延べ面積200平方メートルを超える木造平屋建てなどについて、建築確認時に構造関係規定などの審査が必要になります。
この見直しは、主に木造戸建て住宅や小規模な木造アパートに関係する制度です。一般的な鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションについて、今回初めて構造審査が必要になったというものではありません。
ただし、マンションオーナーが敷地内に木造の管理棟、倉庫、店舗などを新築・増改築する場合には、建築確認手続きへの影響を確認する必要があります。
3.既存建築物に関する規制の合理化
既存建築物の増築や用途変更を行いやすくするための規制の合理化も含まれています。
既存不適格建築物とは、建築時には適法だったものの、その後の法改正によって現在の基準には適合しなくなった建物です。既存不適格建築物を増築・改築する場合、工事内容によっては現在の基準への適合が求められますが、改正により一部の規制について適用方法が見直されています。
築年数の古いマンションで増築、用途変更、共用部分の大規模な改変を計画する場合は、既存不適格となっている部分の有無や、工事によって適用される規定を事前に調査することが重要です。
耐震基準の見直し
今回の2025年改正は、マンションの非構造部材に対する耐震基準を一律に強化することを主目的とした改正ではありません。ただし、外壁タイルや天井材などの安全管理は、建築基準法に基づく定期報告制度や日常の維持管理において、引き続き重要です。
タイルの浮きやひび割れ、天井材の劣化などを放置すると、剥落や落下事故につながるおそれがあります。法改正への対応とは分けて、定期調査や大規模修繕のタイミングで劣化状況を確認することが大切です。
マンションへの影響を整理
マンションオーナーや管理組合への影響は、建物の状況や予定している工事によって異なります。
| 計画・工事内容 | 2025年改正との主な関係 |
|---|---|
| マンションの新築 | 原則として省エネ基準への適合が必要 |
| 建物の増築・改築 | 増改築部分について省エネ基準の確認が必要となる可能性がある |
| 用途変更 | 用途や規模によって建築確認や現行基準への適合確認が必要 |
| 外壁塗装・防水工事 | 通常は省エネ基準適合義務の直接的な対象ではない |
| 窓・外壁の断熱改修 | 法的義務の有無とは別に、省エネ性能向上や補助制度活用を検討できる |
| 設備更新 | 通常の更新が直ちに建築基準法改正の適用対象になるとは限らない |
| 木造の管理棟などの新築 | 規模や階数によって4号特例見直しの影響を受ける可能性がある |
▼出典元▼
国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」
国土交通省「全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられます」
国土交通省「建築物省エネ法第10条 省エネ基準適合義務の対象について」
【免責注記】本記事は制度の一般的な内容を解説するものであり、個別の建築計画に対する法的判断を示すものではありません。実際の適用については、所管行政庁、指定確認検査機関、建築士などにご確認ください。
マンション管理組合・法人オーナーが取るべき対応
改正を「知識」として把握するだけでは十分ではありません。管理組合や法人オーナーは、自身が管理する建物の現状を把握し、将来の増改築や省エネ改修も見据えた修繕計画と資金計画を具体的に進めていく必要があります。
特に長期修繕計画の再点検と、省エネ・耐震診断の早期実施は優先度が高い対応です。以下の表に、取り組むべき主要項目を整理しました。
| 対応項目 | 具体的内容 | 効果 |
| 長期修繕計画と資金計画の再点検 | 断熱改修や設備更新の必要性を確認し、修繕積立金、融資、補助制度を含めた資金計画を再構築 | 将来の資金不足リスクを把握できる |
| 建物の法的状況の確認 | 検査済証、確認申請図書、修繕履歴、既存不適格部分の有無を確認 | 増改築や用途変更時の手続き上の問題を早期に発見できる |
| 省エネ性能の把握 | 窓、外壁、屋上、空調、給湯、照明などの現状を調査 | 優先して改修すべき場所を整理できる |
| 劣化診断・耐震診断の実施 | 外壁、屋上、共用部、構造部分などを必要に応じて調査 | 安全性の確保と修繕時期の適正化につながる |
| 専門家への事前相談 | 建築士や施工会社、行政機関に計画段階から相談 | 工事開始後の設計変更や手続きの遅れを防ぎやすい |
建築確認図書や修繕履歴を確認する
マンションの増築、用途変更、大規模な改変を検討する場合は、建築確認済証、検査済証、設計図書、過去の改修履歴などを確認しましょう。
古い建物では、図面と現在の建物の状態が一致していないことや、検査済証が保管されていないこともあります。計画の初期段階で資料を整理しておくことで、設計や法令調査を進めやすくなります。
長期修繕計画と資金計画を見直す
改正基準に対応するためには、従来の修繕項目に加えて必要に応じて断熱改修、高効率設備への更新、耐震改修などを検討することが重要です。
特に修繕積立金が不足している場合は、資金計画の見直しが不可欠です。追加の積立や金融機関の融資に加え、補助金の活用も選択肢となります。早期に計画を再構築することで、突発的な費用増加を防ぎ、改修をスムーズに進められます。
省エネ性能と建物の劣化状況を調査する
既存マンションの通常修繕に省エネ基準が一律適用されるわけではありませんが、将来の光熱費や建物価値を考えるうえで、省エネ性能の把握は有効です。
外壁や屋上、窓、空調、給湯設備、照明設備などを調査し、修繕時期と合わせて省エネ改修を実施できるか検討します。
早期に診断を行えば、補助金の公募スケジュールに合わせて設計・申請が可能となり、費用負担を抑えながら改修を進められる場合があります。
ただし、補助制度には対象建物、対象設備、申請時期、着工前申請などの条件があります。補助金の交付を前提に契約や工事を進めず、必ず最新の公募要領を確認してください。
工事内容が法改正の対象になるか確認する
「大規模修繕」という言葉は、マンション管理上の大規模修繕工事と、建築基準法上の「大規模の修繕」「大規模の模様替え」で意味が異なる場合があります。
外壁塗装や防水工事を行うからといって、必ず建築基準法上の大規模の修繕に該当するわけではありません。主要構造部のどの部分を、どの程度修繕するかによって判断されるため、工事内容を建築士や行政機関に確認することが重要です。
改正を踏まえて建物を見直すメリット
法改正への対応は確かにコストを伴いますが、それは単なる負担ではなく、建物の資産価値や社会的評価を高める戦略的な投資でもあります。
改正に沿った新築・増改築を行うことに加え、既存建物についても計画的な修繕や省エネ改修を行うことで、賃貸市場における競争力の維持や、維持管理費の適正化が期待できます。
1.資産価値の維持
建物の安全性と省エネ性能を適切に維持することは、購入希望者や入居希望者が物件を選ぶ際の判断材料になります。
ただし、省エネ改修や耐震改修を行えば、必ず売却価格や賃料が上昇するとは限りません。立地、築年数、管理状況、修繕履歴などを含めて総合的に評価されます。
改修内容や点検結果、修繕履歴を適切に保管し、購入希望者や入居希望者に説明できる状態にすることが、建物への信頼につながります。
2.光熱費と維持管理費の削減
窓や外壁の断熱性能を向上させたり、高効率な空調・給湯・照明設備へ更新したりすることで、共用部分や専有部分のエネルギー使用量を削減できる可能性があります。実際の削減効果は、建物の構造、設備の使用状況、居住人数、気候条件などによって異なります。改修前に省エネ診断や費用対効果の試算を行うことが大切です。
3.補助金や優遇制度の活用
国や自治体は、省エネ改修や耐震補強を促進するために、さまざまな支援制度を設けています。例えば、省エネ性能を高める工事は国や自治体の補助事業、耐震改修は自治体の耐震化促進事業などの対象になる場合があります。建物の用途や工事内容によっては、税制上の特例や融資制度を利用できる場合もあります。
支援額や補助率は制度によって異なり、予算上限への到達、審査、抽選などによって利用できない場合もあります。補助制度を利用する場合は、交付決定前に契約や着工をしてよいかを含め、最新の公募要領を必ず確認してください。
法人・管理組合から多い質問
改正内容を理解しても、実務上「自分たちの建物にはどう影響するのか」「資金や制度をどう活用すべきか」といった疑問は残ります。ここでは、法人オーナーや管理組合から寄せられる代表的な質問にお答えします。
Q1:改正は既存マンションにも適用されますか?
A:既存マンションに対して、2025年4月1日から新しい省エネ基準が一律に遡って適用されるわけではありません。
省エネ基準の適合義務は、原則として新築および増改築部分が対象です。用途変更や大規模な修繕・模様替えについては、建築確認の要否や適用される規定を工事内容ごとに確認する必要があります。
一般的な外壁タイル補修や設備更新のみで、直ちに省エネ基準適合義務が生じるとは限りません。判断が難しい場合は、設計前に所管行政庁や建築士へ相談してください。
Q2:外壁塗装や大規模修繕工事にも建築確認が必要ですか?
A:工事の名称だけでは判断できません。建築基準法上の「大規模の修繕」「大規模の模様替え」に該当するかは、主要構造部の種類や修繕する範囲などによって判断されます。
通常の塗装、防水、部分的なタイル補修などは、一般的に建築確認を必要としないケースが多いものの、建物や工事の条件によって異なります。工事前に建築士や所管行政庁へ確認することが適切です。
Q3:補助金はどのように確認できますか?
A:基本的には国土交通省、経済産業省、環境省、自治体などの公式サイトに最新情報が掲載されます。
補助金制度は年度ごとに条件や対象工事が変わるため、過去の制度内容だけで判断しないことが重要です。実務的には、建設業者やコンサルタントが補助金情報を把握している場合もありますが、最終的には公募要領や行政機関の案内を確認してください。
公募開始前から建物調査や見積もりの準備を進めることで、申請期間内に必要書類を整えやすくなります。ただし、事前準備によって採択が保証されるものではありません。
Q4:修繕積立金が不足している場合はどうすればよいですか?
A:修繕積立金の不足は、多くのマンション管理組合で共通する課題です。主な対策としては、次の方法が考えられます。
- 修繕積立金の増額
- 工事内容や実施時期の見直し
- 金融機関の修繕ローンの利用
- 国や自治体の補助制度の活用
- 一時金の徴収
補助制度を利用できる場合は費用負担の軽減につながりますが、補助金だけで資金不足のすべてを解消できるとは限りません。また、専門家に依頼して「法改正や設備更新を踏まえた修繕計画の再試算」を行うことで、将来的な不足額や積立金の適正水準を把握しやすくなります。
Q5:マンションオーナーが最初に行うべきことは何ですか?
A:まずは、今後予定している工事が、通常の修繕、新築、増築、改築、用途変更のどれに該当するのかを整理しましょう。
そのうえで、建築確認図書や修繕履歴を確認し、建築士や施工会社に相談します。工事内容が具体化する前に法的条件を確認することで、設計変更、予算超過、工期の遅れを防ぎやすくなります。
2025年改正を踏まえて建物の将来計画を見直す
2025年の建築基準法・建築物省エネ法改正は、すべての既存マンションに直ちに改修を義務付けるものではありません。一方で、新築、増改築、用途変更などを検討する場合には、省エネ基準や建築確認制度への対応が必要になる可能性があります。
管理組合や法人オーナーが早期に建物の状況を把握し、長期修繕計画と資金計画を見直すことで、突発的な工事負担を抑えながら、安全性や省エネ性能の向上を進めやすくなります。
私たちエースでは、建物の劣化状況や修繕履歴を踏まえ、外壁、屋上防水、共用部分、設備などの修繕提案を行っています。
耐震診断、省エネ計算、建築確認申請など、資格や専門的な判断が必要な業務については、対応範囲を確認したうえで、建築士などの専門家と連携して進めることが重要です。法改正そのものへの対応だけでなく、建物の現状や今後の利用計画を整理する機会として、長期的な修繕・改修計画を検討しましょう。
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